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肩こりは、現代人の多くが抱える悩みのひとつで、首から肩、肩甲骨周りの筋肉が緊張し、不快感や痛みを感じる状態を指します。

 

その主な原因は以下の通りです。

1. 姿勢の悪さ

長時間のデスクワークやスマートフォンの使用により、前傾姿勢や猫背になることで、首や肩の筋肉に過剰な負荷がかかります。

特に、頭が前に突き出た姿勢(ストレートネック)は、首の筋肉に過度の緊張をもたらします。

 

 2. 運動不足

日常的に運動不足であると筋肉の柔軟性が低下し血流が悪化します。

これにより、肩周辺の筋肉が硬直しやすくなります。

また筋力が低下することで肩や首を支える筋肉への負担が増加します。

 

3. ストレス

心理的なストレスは交感神経を活性化させ、筋肉の緊張を引き起こします。

さらにストレスが慢性化するとホルモンバランスの乱れや自律神経の不調を招き、肩こりが悪化する場合があります。

 

 4. 血流不良

冷え性や長時間同じ姿勢でいることで、肩周辺の血流が悪化します。

酸素や栄養が十分に供給されないことで肩こりが発生します。

 

これらの要因が複合的に作用することが多く肩こりが慢性化する原因となります。

 

鑑別すべき疾患

肩こりの症状が単なる疲労や筋肉の緊張によるものであれば良いですが、以下のような疾患が隠れている可能性もあります。

1. 頸椎症

頸椎の変形や神経の圧迫によって肩や首に痛みが生じることがあります。

 

 2. 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)

肩の可動域が制限され、肩こりと共に痛みを伴うことがあります。

 

3. 頸椎椎間板ヘルニア

椎間板の変性により神経が圧迫され、肩こりや腕のしびれが現れることがあります。

 

 4. 心疾患

狭心症や心筋梗塞の前兆として肩や背中の痛みが現れることがあります。

特に左肩の痛みには注意が必要です。

 

 5. 内臓疾患

胆嚢や胃の疾患が原因で、関連痛として肩に痛みが出る場合があります。

肩こりが長期間続く、痛みが強い、いつもと違う痛み方、または他の症状を伴う場合は一度医師に相談することをおすすめします。

 

肩こりの東洋医学的弁証分類

 

東洋医学では、肩こりを「気血(きけつ)」や「経絡(けいらく)」の滞りとして捉え、その原因を弁証論治によって分類します。ここでは弁証論治の一部を例にあげます。

 

 1. 気滞(きたい)

ストレスや情緒の不安定によって「気」の流れが滞る状態です。肩の重さや張り、イライラ感が特徴的です。治療では、気の巡りを良くして精神的な安定を図ります。

 

 2. 血瘀(けつお)

血流が滞り、「瘀血(おけつ)」が発生した状態です。

肩の痛みが鋭く、特に夜間に悪化しやすいことが特徴です。

血液循環を改善し、痛みを緩和する治療が中心となります。

 

 3. 痰湿(たんしつ)

身体に余分な水分や湿気が溜まり、「痰湿」が生じた状態です。

肩こりに加え、体の重だるさや疲労感が伴うことが多いです。

治療では余分な湿気を取り除き体内環境を整えます。

 

 4. 肝腎不足(かんじんふそく)

 

加齢や慢性疲労によって、肝(かん)と腎(じん)の機能が低下した状態です。

肩こりと共に腰痛や疲労感、めまいを伴うことが一般的です。

治療では肝腎の機能を補強し全身の活力を取り戻します。

 

 5. 風寒湿邪(ふうかんしつじゃ)

外的な要因、特に風邪や寒さ、湿気による影響で発症する肩こりです。

急性的で痛みが強く、冷えると悪化することが特徴です。

外邪を取り除き、体を温める治療が中心となります。

当院ではどこの臓腑、経絡の働きが乱れているのか、弱っているのかを判断するために問診にお時間を頂きます。

 

肩こりになぜ鍼灸が効果があるのか

鍼灸は肩こりの症状を緩和するための有効な方法として広く認識されています。

その効果の理由を以下に解説します。

 

 1. 筋肉の緊張を緩和

鍼を刺入することにより、筋膜(fascia)や筋線維(muscle fibers)に直接作用し、過緊張状態にある筋肉の弛緩を促進します。

また、刺入による局所的な微細損傷が自己治癒機能(tissue repair mechanisms)を刺激し、筋肉の再生と修復をサポートします。これにより慢性的な筋緊張が緩和されます。

 

 2. 神経調節作用

鍼刺激は皮膚や筋肉内の受容器を介して、脊髄レベルで求心性神経(afferent nerves)を活性化します。

この過程で内因性オピオイド(endorphins)やエンケファリン(enkephalins)といった鎮痛物質が放出され痛みの知覚を抑制します。

また、交感神経と副交感神経のバランスを整え自律神経系の正常化を図ります。

 

 3. 血流改善と血管拡張

鍼による刺激は酸化窒素(nitric oxide, NO)の産生を促進し血管内皮の機能を改善していると考えられています。

この結果局所の血管が拡張し血流が改善されます。鍼が冷え性を緩和する要因でもあります。

肩周辺の血液循環が向上することで酸素供給が増加し、疲労物質や老廃物の排出が効率的に行われ肩こりが解消します。

 

4. 中枢神経系への影響

 

鍼刺激は脳の視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)に働きかけ、ストレスホルモンであるコルチゾール(cortisol)の分泌を調整します。

この作用によりストレス関連の筋緊張が緩和されると同時にリラクゼーション効果が得られます。

 

5. 炎症反応の抑制

鍼は炎症性サイトカイン(cytokines)の過剰な分泌を抑制し、抗炎症性メディエーター(anti-inflammatory mediators)の生成を促進します。

これにより肩こりに伴う局所的な炎症や腫れが軽減され痛みの改善が期待されます。

 

 まとめ

肩こりは姿勢や生活習慣、ストレスを含むさまざまな要因が絡み合って引き起こされる症状です。

東洋医学では肩こりを気血や経絡の滞りとして捉え、個々の体質や状態に応じた弁証論治を行います。

また鍼灸治療は筋肉の緊張を緩和して血流を改善し、自律神経を調整することで、肩こりの根本的な原因にアプローチします。

 

肩こりに悩んでいる方は、自分の生活習慣や姿勢を見直しつつ鍼灸治療もお試しください。

 

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